今年の干支は戌(いぬ)。犬は社会性があり、人との付き合いも古く、忠実な動物なことから、戌年の特徴は「勤勉で努力家」とされる。映画のモデルにもなった名犬の血を引く子犬、クマ対策のために働く犬「ベアドッグ」、日本固有の種として保護されてきた犬など、戌にまつわる甲信越の話題を紹介する。
日本でも有数なリゾート地である軽井沢町の山々は、ツキノワグマの生息域として知られる。ときに人身被害や農作物などの被害も発生する。だからといって、クマを駆除する、つまり殺処分するばかりでは、自然保護はかなわないし、人間とクマが共存する社会はつくれない。
その理想を実現すべく、クマの臭いを敏感に察知するよう特別の訓練を受けた「ベアドッグ」が、この町で活躍している。今年3月、4歳になる雌のカレリア犬「タマ」だ。
タマは平成27年、米国のベアドッグ育成機関「WRBI」から生後1歳6カ月のとき、共存の取り組みをしている「ピッキオ」(同町)が迎え入れた。「タマ」の命名は「弾」に由来する。いかにも勇ましい。
体高58センチ、体重は25キロ。強い前肢を支える胸筋がしっかりとついていて、背筋がピーンと張っており、早く走るための広背筋がとても発達していることをうかがわせる。猟犬としては申し分のない体形なのである。
ハンドラー(飼育士兼訓練士)の田中純平さんは「ベアドッグは警戒心が強すぎても弱すぎてもいけない。『タマ』はうってつけの性格をしている。リーダー的な犬になれます」と話す。
クマが住宅街に出没した後では何かと騒動になるので、その前に田中さんの指示に従いクマをほえたて、山奥に追い込む。クマは本来、温厚で臆病だとされるため、「何事か」と慌てふためき、すごすごと引き下がる、というわけだ。
タマが「仕事」に汗を流す期間は、クマが活動する毎年6~10月ごろ。毎日午前4時から働いている。休暇が半年以上もあるが、なにも自由気ままな生活を送っているわけではない。田中さんと月10回くらいの訓練に取り組む。
訓練は極めて実践的だ。田中さんによると、クマの臭いは、年齢、性別によって異なるし、いつもまっすぐ歩くわけではなく、鋭角に折れたり、樹木に上ったりするから、正確に追跡するのは容易ではないという。だから、こうしたクマの生態を十分に踏まえた上で行っている。
田中さんが仕事で使う軽バンの荷室はタマの特等席。バックドアを開き、田中さんが「BEAR DOG」のワッペンが貼られたハーネスをつけると、「訓練が始まるのだと分かる」(田中さん)そうだ。
クマが行動したように森の木々や下草につけられた臭いをたどり、目標物まで脇目もふらず突っ走る。リードを握る田中さんの手にも力が入る。目標物が樹上に仕掛けられていたので少し戸惑ったようだ。その間、ほんの数秒。探し当て目標物にジャンプして飛びついた。「グッド、グッド」。田中さんが頭をなでる。タマもうれしそうだ。これでもかというくらい尻尾を振って応えている。
タマのおかげで町の住宅街でクマによる被害件数は、データを取りまとめた11年以降、最多だった18年の255件から29年には4件に激減した。「戌年」を迎えた今年は、なお一層、「仕事」に励んでもらいたい。(松本浩史)
配信2018.1.3 07:04更新
産経ニュース
http://www.sankei.com/region/news/180102/rgn1801020006-n1.html
日本でも有数なリゾート地である軽井沢町の山々は、ツキノワグマの生息域として知られる。ときに人身被害や農作物などの被害も発生する。だからといって、クマを駆除する、つまり殺処分するばかりでは、自然保護はかなわないし、人間とクマが共存する社会はつくれない。
その理想を実現すべく、クマの臭いを敏感に察知するよう特別の訓練を受けた「ベアドッグ」が、この町で活躍している。今年3月、4歳になる雌のカレリア犬「タマ」だ。
タマは平成27年、米国のベアドッグ育成機関「WRBI」から生後1歳6カ月のとき、共存の取り組みをしている「ピッキオ」(同町)が迎え入れた。「タマ」の命名は「弾」に由来する。いかにも勇ましい。
体高58センチ、体重は25キロ。強い前肢を支える胸筋がしっかりとついていて、背筋がピーンと張っており、早く走るための広背筋がとても発達していることをうかがわせる。猟犬としては申し分のない体形なのである。
ハンドラー(飼育士兼訓練士)の田中純平さんは「ベアドッグは警戒心が強すぎても弱すぎてもいけない。『タマ』はうってつけの性格をしている。リーダー的な犬になれます」と話す。
クマが住宅街に出没した後では何かと騒動になるので、その前に田中さんの指示に従いクマをほえたて、山奥に追い込む。クマは本来、温厚で臆病だとされるため、「何事か」と慌てふためき、すごすごと引き下がる、というわけだ。
タマが「仕事」に汗を流す期間は、クマが活動する毎年6~10月ごろ。毎日午前4時から働いている。休暇が半年以上もあるが、なにも自由気ままな生活を送っているわけではない。田中さんと月10回くらいの訓練に取り組む。
訓練は極めて実践的だ。田中さんによると、クマの臭いは、年齢、性別によって異なるし、いつもまっすぐ歩くわけではなく、鋭角に折れたり、樹木に上ったりするから、正確に追跡するのは容易ではないという。だから、こうしたクマの生態を十分に踏まえた上で行っている。
田中さんが仕事で使う軽バンの荷室はタマの特等席。バックドアを開き、田中さんが「BEAR DOG」のワッペンが貼られたハーネスをつけると、「訓練が始まるのだと分かる」(田中さん)そうだ。
クマが行動したように森の木々や下草につけられた臭いをたどり、目標物まで脇目もふらず突っ走る。リードを握る田中さんの手にも力が入る。目標物が樹上に仕掛けられていたので少し戸惑ったようだ。その間、ほんの数秒。探し当て目標物にジャンプして飛びついた。「グッド、グッド」。田中さんが頭をなでる。タマもうれしそうだ。これでもかというくらい尻尾を振って応えている。
タマのおかげで町の住宅街でクマによる被害件数は、データを取りまとめた11年以降、最多だった18年の255件から29年には4件に激減した。「戌年」を迎えた今年は、なお一層、「仕事」に励んでもらいたい。(松本浩史)
配信2018.1.3 07:04更新
産経ニュース
http://www.sankei.com/region/news/180102/rgn1801020006-n1.html
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